米軍機事故と日米地位協定の問題点
沖縄国際大学への米軍大型ヘリコプター墜落事故の原因
平成16年10月8日の外務省・防衛施設庁発表によると、今回の沖縄国際大学への米軍ヘリコプター墜落事故発生原因は整備不良によるものであったとのこと。
整備要員が実施されるべき整備のないようについて混乱し、また、事故機のフライト・コントロールの接続について決められた手順を守らず、コッター・ピンはテール・ローター・サーバーの接続ボルトに正しく装着されていなかったというのです。そのため、接続ボルトが飛行中に外れ落ち、テール・ローターの制御が不能になってしまい、テール・ローターの羽根がパイロン(垂直尾翼)に当たり、続いてパイロンが損傷し、テール・ローターが事故機から外れたのです。
その要因としては、整備要員の勤務時間が長すぎたこと、昼夜の整備要員の交代時に伝達不良があったこと及び、作業手順の整備マニュアルに不明確な記述があったことがあげられているとあります。
【↑画像クリックで拡大】 墜落機はこのヘリと同種類のCH-53D機
日米地位協定とは?
外務省によると、「日米地位協定は、日米安全保障条約の目的達成のために我が国に駐留する米軍との円滑な行動を確保するため、米軍による我が国における施設・区域の使用と我が国における米軍の地位について規定したものであり、日米安全保障体制にとって極めて重要なもの」とされていますが、平たく言うと、「働きやすいように日本における米軍の地位を確保してあげましょう」というような協定だといえます。
日米地位協定は日本には不利なのか?
米軍基地は、アメリカの領土で治外法権だと思っている人もいると思いますが、米軍の施設・区域は、日本の領域で、日本政府が米国に対しその使用を許しているものですので、アメリカの領域ではありません。ですから、米軍の施設・区域内でも日本の法令は適用されています。
ただ、米軍自体には、特別の取決めがない限り日本の法令は適用されないことになっているのです。これは、日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです。一方で、同じく一般国際法上、米軍や米軍人などが我が国で活動するに当たって、日本の法令を尊重しなければならない義務を負っており、日米地位協定にも、これを踏まえた規定がおかれています(第16条)。
日米地位協定は、日本にとって不利になっていると主張する人もいます。日米地位協定は、「日本と極東の平和と安全の維持に寄与する目的で日本に駐留する米軍が円滑に活動できるよう、米軍による日本における施設・区域の使用と日本における米軍の地位について規定したもの」という前提がありますので、米国との関係で日本にとって不利か有利かという問題ではないのですが、実際の運用は、どうも日本側が不利だという実感が強いようです。
沖縄国際大学のヘリ墜落事故における日米地位協定の問題点
日米地位協定第17条6項(a)においては「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、犯罪についての全ての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出について、相互に援助しなければならない。」と定めています。しかしながら、今回の墜落事故においては、事故後、沖縄県警が米軍と合同の現場検証を求めたにも関わらず、米軍のあいまいな回答により実現することができなかったようなのです。
【↑画像クリックで拡大】 沖縄国際大学前で撮影
本土で起きた、1968年の九州大学ファントム戦闘機の墜落事故、1977年の横浜市緑区へのファントム戦闘機の墜落事故、1989年の愛媛県の伊方原発から1km地点への普天間基地所属のCH-53E型ヘリが墜落事故、いずれも各管轄の県警に現場検証が認められ、なおかつ消防も現場に入り合同検証をしています。
それなのに、沖国大への米軍ヘリ墜落事故は事故現場の混乱によって、同規定が有効に機能せず、米軍の違法活動がなされていることから、今後の日米地位協定上の問題をさらけ出したものだったといえるでしょう。
普天間基地における米軍機事故の発生状況
米軍普天間飛行場は、市の中心部に位置し、滑走路が住宅地域と隣接した飛行場であり、一日に数十回、数百回という離陸着陸及び住宅地域上空での旋回飛行訓練を行っています。 普天間飛行場所属のヘリコプターや軍用機の航空機事故は、1972年(昭和47年)から、2007年(平成19年)の36年間に86回も発生しています。世界一危険な飛行場であるといわれる理由がここにあります。
●部品等の落下:13回
●不時着:24回
●緊急着陸:22回
●墜落:20
●その他:7回(燃料漏れ・火災・空中接触ほか)